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激怒という名のアルバム
2009-02-23
仕事中、見知らぬ番号から着信があった。あいにく、こちらは電話中で、すぐに折り返した。それはぼくがいつもおせわになっている美容師のK氏だった。K氏は2000円台という低価格が売りの美容院に務めていたのだが、つい最近辞めてしまい、独立するからよろしくということだった。
オープンは5月らしい。電話先でどこかよそよそしい雰囲気だったのは、働いていた美容院でのお客さんの個人情報を持っていくのは望ましくないためだった。「髪を切りたいときは電話して」と声は小さく消えた。
彼は若くしてそのチェーンの中でも忙しい店の店長を務めていたので、抱える顧客数は多く、辞めるときはなかなかの苦労があったと推測する。ぼくの2000円は今後、そのチェーン店に入らなくなる。
そんなことより、ぼくはちょうど伸びきった髪を切りたいところだったので、5月までどうしようかと思った。
そういえば、髪を切ってあげると呼び出されたことがある。高校時代、あれは一体なんだったのだろう。ぼくは拒否したが、それはそれで別になんでもなかった。
突然だが、蒼井優のオーラはあの長い髪から発散されているような気がする。後ろ髪は腰まであり、波打つパーマがかけられている。ぼくが女性だったら、同じように伸ばしてみたい。髪留めを口にくわえて、後頭部で一本に束ねてみたい。
さて、話は変わるが、先日久々にCDを購入した。CDというものは今でも売れているものなのだろうか、あまりに買うのが久々すぎて、CD業界を心配してみた。といっても、中古である。あれあるかなと思い浮かべたアルファベットは「captain beefheart and his magic band」。棚を調べると、1枚だけあった「trout mask replica」(1969)。ぼくはかつてこのアルバムを持っていたけれども、いつのまにかなくなっていた。
捨てたのかもしれない。ぼくがこのバンドを知ったのは高校生のときにゆらゆら帝国の坂本氏がある雑誌のインタビューでオススメのアルバムと紹介していたからだ。帰って家で聞いてみたのだが、一体これは何なのだろうか、と理解を超えてしまい、それ以来、どこかへ消えてしまったのだ。文字通り難解なものだった。1回嫌いになったのに、再び聞きたいとは。これについて、ぼくは驚かない。ぼくは変化しているということだ。ピーマンもいつのまにかおいしく食べている。にんじんもなすも。
だが、結局なぜか購入しなかった。代わりに、目に飛び込んできたのが「雑派大魔神 ノートルダムで激怒」というアルバム。フランクザッパ、1974年の作品だ。
タイトルからしてこれはかなりすばらしい楽曲が揃っているのではないかと、頭の中で勝手なロックンロールが流れ出したのである。
ぼくは先日、後藤友香氏の「正義隊2」を読んだばかりで、彼女があとがきで引用したロックパンドramonesのエピソードを思い出していた。ramonsのボーカルは子供のころ、雷の音を録音してテープで聞いていたという。読んだとき、それは文字通り雷のような衝撃を受けた。
ramonsの理想はエレクトリックギターの音を巨大なスピーカーで拡大することではなくて、雷を現出させることだったのだ。それは、雨乞いのような呪術的行為だ。ロックンロールとは、そういう行為の代替なのかもしれない。われわれはしびれたいのである。意味も無く。
さて、zappaの雑派大魔神シリーズのアルバムタイトルがあまりにすばらしいのでキーボードで打ち込んでみたい。
1ニューヨークで憤激
2ボストンで立腹
3フィルモアで逆襲
4ノートルダムで激怒
5パリで逆鱗
6スウェーデンで逆上
7ザールブリュッケンで激昂
8ストックホルムで激憤
ボーナストラックにシドニーで憤慨
アルバムは傑作だった。
しかし、ザッパ氏も髪がぼさぼさだが、髪を切りにいこうとしたら、担当者が独立していたなんてことがあるのだろうか。そのときは、電話越しで激怒、という感じだろう
