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「ミシ」、黒田硫黄レビュー
2008-10-07
![]() | 大金星 (アフタヌーンKC) (2008/09/22) 黒田 硫黄 商品詳細を見る |
黒田硫黄の「大金星」をさっそく読んだ。
これは短編集。収録されている中でよかったのは「ミシ」。大感激です。
あらすじ
下着会社に新卒入社したさえない男と隣のアパートに住むなぞの生物「ミシ」。男は大学時代の同級生に恋心を抱いていたが、告白できずに彼女は地元鹿児島へ帰ってしまう。もう会えない、と思いきや男が会社の新人研修で下着売り場にいた時、彼女が「勝負下着!」を買っているのを目撃。本当に彼女なのだろうか。なぜ東京にいるのだろうか。そんな悩ましい日々にアパートの隣に住む「ミシ」が入り込んできて、男は狂いだす。物語は突然世界の破滅?に向かって進みだし、クロダ的クライマックスを迎える。
クロダ的クライマックスはこれまでの日常が破綻し、世界が滅びる様相を見せる。それは、核ミサイルが打ち込まれるというようなリアルな危機ではなく、クロダの場合、「ミシ」が大量に現れて子供を皆殺しにしてしまうという、SF的危機である。男は「ミシ」の大量発生にもみくちゃにされながら、同じくもみくちゃにされた彼女と出くわす。例え世界が滅びるような危機的状況、自分個人として命に危険のある状況でも、男はもうチャンスを逃さない。彼女に告白する。世界が滅びようとも告白することが大切なのだ。大声で「君が好きだ!!みどりちゃん」。もみくちゃにされた彼女も、そんな危機的状況にいながら、「私いま好きな人がいるのーっ ごめんね元気でね」と大声で断る。二人のこの会話の間、世界の終わりは無視されている。告白シーンは危機を無視してしまうほど、最大級に価値ある瞬間なのかもしれない。しかし、あっさりと断られ、次のシーンでは彼は転勤を命じられ、鳥取へと引っ越す。それで漫画は終わる。最後に急に日常へ連れ戻されると、さっきまでの熱は一体なんだったのかと思わざるを得ないが、その熱の余韻が後味の良さを生み出している。
結局この話は、男が好きだった女の子に告白して、振られるというシンプルなものなのだけれども、黒田硫黄は、そこに誰もが想像しない「ミシ」という生物が持つ物語と、彼女が他の男を好きになるという物語を掛け合わせて、物語にせつなさと不思議さを付加して深さを出している。リアルな恋愛ドラマとSFが同時に進行して、途中でSF恋愛ドラマになるという感じが一種独特の雰囲気を作り上げていて、おもしろいと感じるところである。センスある漫画です。

